中島健人に出会って地獄への道を猛ダッシュしているオタクの話

はじめに。
自分は根っからの腐女子と呼ばれる生き物である。
男が二人いればカップルにし、男が一人でもモブを召喚してカップルにして生きてきた。火のないところでドライアイスを炊いて「火事じゃんwwwやべぇwww煙すげぇwww」と自作自演の1人遊びを楽しんできた。
およそ20年に及ぶオタク人生のほとんどを同性のカップルを捏造することで楽しんできた人間である。
長きに渡るオタク人生でジャニーズ事務所のタレントにのめり込んで収入のほとんどを注ぎ込んだこともある。2次元3次元問わずひたすら貢ぐことで生を実感している生き物である。
そんな生き物が中島健人というアイドルに出会って、沼に頭の先まで浸かることになった話をグダグダ書きたいと思う。無駄に長いので、暇つぶしに鼻でもほじりながら流してほしい。
引っかかるような表現があるかもしれないが「こいつは頭も精神も腐ってる」と思ってスルーしていただけると幸いです。



その日は突然訪れた。
いつもと変わらない日だった。
立っているだけなのに「背が低いからって馬鹿にしてんのやろ!」と喚き散らす二足歩行の生命体に苛立っていた自分は、『背が低いから馬鹿にしてる?日本語通じねぇから馬鹿にしてんだよ。あの生命体がタンスの角に足ぶつけて小指骨折しますように』と祈りを込めて布団に入った。
目をつぶり、ただただ、小さな不幸があの生命体に降りかかることを祈って眠りに落ちたはずだった。
気付けば自分はどこかの温泉に入っていた。
露天風呂に浸かって凝り固まった背中を岩に押し付けながら「マッサージ受けるかな·····」とぼんやり思っていた。
人の気配を感じて少し視線をあげるとそこには腰にバスタオルを巻いた中島健人がいた。
綺麗に割れた腹筋を晒し、ゆっくり足先を湯につけようとしている様をぼんやり眺めていると、こちらに気付いた中島健人が少しはにかみながら会釈してきた。長いまつ毛を伏せたその表情が、とても綺麗だった。なんかムラっときた。
無意識に会釈を返して、彼が湯にその体を沈めるのを眺めていた。
(バスタオル巻いたままやん·····つか、腹筋すげぇな)
自分の腹を見る。
特に出ているわけではないが、腹筋は影も形も見当たらない。
(あそこまでとは言わんけど、鍛えるかな·····)
モチモチした自分の腹を撫でて、ついでに顔に温泉の湯を掛けたところで目が覚めた。
目が覚めて最初にしたことは自分の胸を確認することだった。
大きくはないが、天保山レベルには隆起しているはずの胸が夢の中では消えていたからだ。
柔らかくもなく、揉みごたえもない、ささやかな胸があるのを確認した。
ついでに股間も確認した。
特に何が付いているわけでもない。よし。
自分の体を確認して異変がないことを確かめたあと、
とりあえずもう一度寝た。


朝目が覚めて、夢のことを思い返す。
何故、いきなり中島健人なのか。
その時の彼の印象は「ゴチの人」だった。
職業柄、銀の匙未成年だけどコドモじゃない黒崎くんの言いなりになんてならないで主演していたという情報は知っている。
けれど、「照れることなくSexyを口にして、甘い言葉を吐くイケメン」くらいの印象しかなかった。
当時のお金の振込先であるKinKi Kidsの番組にゲスト出演しているのを見た時に少し恥ずかしくなって口元がモゾモゾした。大先輩を相手にメンタル強いな。
それくらいしか印象がなかったのに、何故か彼の夢を見たのである。
自分は平安時代の人間ではないので、夢に彼が出てきたからと言って「あの人は私のことが好きなのね!」とは思わない。深層心理で中島健人が気になっているんだろうと考えた。
とりあえず体験入学してみよう。
そんな軽い気持ちでSexyZoneと言う沼の淵に立ったのである。


体験入学と言うことで、真っ先に足を運んだのは某中古ショップ。口に合う合わないがあるからまずは中古で、いけそうなら定価で公式にお金を払おう。そんな軽い気持ちで棚の前に立った。
過去のジャニオタ時代の記憶では確か彼らはmildが地球の裏側でwildになると歌っていたような気がする。まだ子供にしか見えない少年たちがSexyを背負わされて、ちょっと荷が重いんじゃないのかと思っていた気がする。変声期前のキラキラ曲より、もうちょっと大人になった時の声を聞いてみたい。そう思って手に取ったのが「Welcome to SexyZone」の初回盤Bだった。
「ほー、DVDも付いてんのか。お得やん」
それが地獄への1歩だなんて想像もせず、レジに持って行って定価より安く買った。正直すまんかったと思ってる。

家に帰ってパソコンに曲を取り込む。
その間にパラパラめくったブックレットにはやたら顔面力の高い男の子たちがキメ顔で映っている。
中島健人·····ケンティーで、この子は確か佐藤勝利·····ハルチカの子·····他がわからん·····
スマホでSexyZoneを調べる。
菊池風磨松島聡マリウス葉·····うん、記憶にねーな。けど、この菊池風磨って子の髪色のセンス好き。
顔面力の高い男子は見飽きない。
可愛い子が揃っとるのぉ·····と思いつつ、取り込みの終わったCDを抜いてケースにしまう。
そこで曲を流さない辺りが自分の悪い癖だ。
開きっぱなしのディスクトレイに特典のDVDを入れてしまったが最後、時間泥棒にまるっと数時間奪われるとは·····

スタイリッシュなセット、白を基調にした衣装、バチくそに踊るイケメン、曲調もいい。ノれる。いけるかもしれへん。
MVの段階では「いけるかもしれない」どまりだった。
メイキングが流れる。わちゃわちゃしているイケメン。可愛い。男の子が集まった時のノリは微笑ましい。
え、ブリーチ4回?紫になる?そこからのピンクゴールド?真似してぇ·····ブリーチ4回か·····頭皮死ぬかな·····でもあの色好き·····
自分の目は菊池風磨の髪の毛に釘付けだった。
というか、メイキング長くね?KinKiさん、もっと短いよね?おふざけ映像とかあるけどこんな長くないよね。ポニキャすげぇな。·····あれ?でもこれで終わりちゃうよな?なんか寺修行って企画付いてなかった?
ポニーキャニオンのサービス精神に恐れおののいていると、ユルユルのトークが終わった。

ここからが本番である。
普通ならメイキングまでで終わるところなのに、何故かメンバーが寺に修行に行くという謎の企画が始まった。しかも、映像を全員で見ながらコメントしていくという方式。これは·····カオスの予感。
内容については未見の方もいらっしゃると思うので書かないが、とりあえず「エクスタシーに達する中島健人」で腹を抱えて笑った。なんでやねん。どこにエクスタシー感じる要素があんねん。
再生を終えた画面に笑顔の金髪のお姉さんが映る。おもむろに右手が動いて、再生ボタンをクリックしていた。
そこから先は言わなくてもわかると思う。
気が付けば深夜だった。
かなり熱を持った年代物のパソコン。吸殻が溢れそうな程積み上げられた灰皿。タバコの空き箱が転がっている。
落ち着くためにタバコを咥えて火をつけた。カラッカラに渇いた喉に煙が滲みる。
チリチリチクチク刺激する煙を肺に送り込みながら脳内で反芻する。

···············。明日、CDショップ行こう。

振込先が増えた夜だった。



好きなコンテンツは公式に金を払うのがモットーである。
どうしても定価で手に入らないものは中古で探すが、基本は公式に金を払う。
円盤を買い漁っている時にふと雑誌の存在を思い出した。
昔お世話になりまくってたアイドル誌だ。
なんのための書店勤務だ。ここで買わないと書店員失格だ。
出勤してすぐにアイドル誌のコーナーを確認する。奇しくも、話題になったふまけん表紙のWINK UPが平積みされていた。
まぁ買うよね。紙媒体に金を払うのは書店員の定め。
隣に並んでいたduetとPOTATOもまとめて手に取る。この年でドル誌まとめ買いなんて·····職場だから恥ずかしくないもん!!
愛しい愛しい英世に別れを告げてキラッキラのドル誌と手を繋いで帰った。
ご存知の通り、あのWINK UPは神だった。
イケメンが肩が触れ合う近い距離で焼きそば食ってんだぜ?箸になりてぇと思うわな。いや、違う。箸じゃねぇ。ソファになりたい。ふまけんが身を委ねるソファになりたい。2人を優しく抱きとめるソファになりたい。上に乗られたい。

そう思っていた段階で沼に首まで浸かっていた。
しかし、ここではまだ沼に浸かっている自覚はなかった。KinKi兄さんが1番の振込先で、彼らに振り込むのは余裕がある時だけだと思い込んでいた。
職場近くのCDショップのSexyZoneのCDを買い尽くして、通販サイトでライブDVDを買って、彼らがコーナーを持っている雑誌を軒並み買っていてもなお、まだ沼には浸かってないと思っていた。
ある日、CDショップのお姉さんに声を掛けられた。
「毎度予約に来られるのも面倒だと思うので、CDの自動予約受けることできますがいかがなさいますか?」
「え?そんなんあるんですか?」
「はい。毎回全種購入されるんでしたらこちらで勝手に予約しておけますよ」
「じゃあお願いします」
KinKi KidsとSexyZoneでいいですよね?」
「はい」
「ではノートに書いておきますね〜」
··········KinKi KidsとSexyZone?あれ?いつの間にセクゾちゃんも?これはもしかして「KinKiとセクゾの人」って認識されてる?
買うよ。全種買いするよ。公式にお金払うのは当然やん?それがオタクってもんだろう?
でもまだ沼ってない。俺はKinKi沼の住人だから。まだセクゾ沼の住人になってない。
脳内で言い訳しながら家に帰った。
寝るまでのルーティンを終わらせて一人きりのリビングで徐にパソコンを立ち上げる。円盤をギッチギチに詰めてあるカバンを漁って個人的に最高傑作のSTAGEのライブDVDをセットする。コーヒーとタバコを用意してソファに座れば観客の悲鳴が聴こえてきた。
何度見てもいい。何回でも見るべき。何百回と見るべき。人生最後の日に見たい。幸せを抱いてこの世に別れを告げたい。そんなやつです。

ほんまにもうね、あのオープニングの衣装ね。あれね。やばい。語彙力が死ぬ。ケンティーの衣装が性癖をぶち抜いてる。出会い頭に刃渡り40センチの牛刀で心臓刺されたくらいの衝撃。即死レベル。おい、それでRTTはアカンって。倒れ伏してる遺体にガソリンぶっかけて火付けてるやつ。復活させへんつもりか。ちょ、総マリちゃん可愛いんですけど。そこでちゅーしちゃうの?え?可愛いの極み?何?何?何が起きてんの?ここは天国???ふましょりがイチャついてる段階で既に意識は何処かに飛びそう。しょりたんの衣装のボタンになりたい。ふまさんのあの綺麗な指で弾かれたい。呼吸困難で朦朧とする意識を必死に引き止めて画面をガン見する。ここからがやばい。語彙力が死ぬ(二回目)。ミスミスはね、アカンやつやて。ケンティーがえっちすぎる。一気に女性の色気を全面に押し出してくるケンティーに怒りさえ覚える。なんやねんあの生き物。なんやねん!怒りがMAXになった時に流し目唇ペロリ。爆発した。もう何もかもが爆発した。心臓ぶち抜かれてガソリンぶっかけられて燃やされた上に至近距離でツァーリボンバが炸裂した。何も残ってない。ゾンビ退治にしても威力が強すぎる。記憶さえ飛ぶ。ぶっちゃけここから先は何回見ても記憶が薄い。ミスミスのせいです。無事に記憶を保つにはミスミスを飛ばさなければいけない。でも見ちゃうんだな〜。見ないって選択肢ねぇんだよな〜。

全体の感想を書くと気持ち悪いくらい長くなるので自重するけど、とにかくすごい。語彙力が死んでるから伝えられへんけど、すごい。
可愛いとかっこいいの塊なんだもん。この世の可愛いとかっこいいを全て集めて凝縮して5つに分けたらSexyZoneが完成するんです。そう言いきれる。
ライブを最後まで見て布団に潜る。スマホを手に取って動画サイトを開く。もちろん検索ワードにぶち込むのは「SexyZone」。ズラリと並ぶ動画を1つずつクリックしていく。スマホが熱くなって、電池残量が15パーセントを切ったところで充電器に繋げて目を閉じる。
認めるわ。沼ってる。だってもう2時だもん。いっつも11時には寝てるのに、もう2時だもん。明日も仕事やのに2時まで動画見てんだもん。沼だわ。紛うことなき沼だわ。ごめん。沼ってないとか言ってごめん。沼です。胸を張って言える。沼にはまってます。


沼にはまっていると自覚してから更に沈む勢いが増した。
そして、それと同時に地獄に向かって猛ダッシュを始めた。フルスピード。
スタートダッシュに成功したおかげでスピンをすることなく地獄へのロードを爆走している。
マリオカートもこれくらい華麗にスタートダッシュを決めてみたい。

時間があればCDショップを巡る。
引きこもりの癖にフラーっと出かけては円盤を探しに行く。
休日は休め
る日と書いて休日なんだよ、と言っていた頃が懐かしい。体を休めるどころか仕事よりアグレッシブにウロウロしてるわ。

同僚にとりあえず見てくれと動画のURLを送る。
新規を開拓するために先輩方が残してくれている動画に頼っている。
某サイトに関しては賛否両論あるだろうが、全く興味を持ってなかった人に勧めるにはとてもありがたい。
セクチャンずるいよね。すこ。まじですこ。
県民性でか、面白い動画を送ると見てくれるのでとりあえずセクチャンのまとめとけんしょりラジオをオススメした。
同僚は優しいから受け止めてくれているが、一歩間違えたら交友関係に亀裂が入りそうなくらいに動画を勧めている。
拒否らずに受け止めてくれる同僚にSexy Thank You!

暇さえあればTwitterで検索する。
時間が足りない。働いているとどうしても時間が足りないのである。
仕事する時間を削りたいが、それはまぁ難しい。
必然的に睡眠時間を削ってオタク活動に勤しむことになる。
これまで平日の平均約9時間という脅威の睡眠時間のおかげでほとんど肌荒れしなかったのに、どんどん肌が荒れていく。
マッサージなど全く効かない。むしろ肌荒れが悪化していく。
メンタルは整っていくのに反比例して肌はどんどん荒れていく。

財布も軽くなっていく。
時々姿を見せていた一葉の姿をここ最近見ていない。
一瞬姿を見せる諭吉は一日と財布に滞在することなく英世になって帰ってくる。
酷い時は金属の薄い塊だ。
財布は重くなるが、軽くなる。
物理では重いのに概念では軽い。哲学だな。
ちなみにこれを書いている今、財布の中には英世すらいない。
桜と平等院鳳凰堂で構成されている。人間をください。
明日ATM行きます。

タバコの量も増えた。
毎日空箱が机に転がっている。
全てがフィルターがボロボロになるくらい噛まれているのは上がりそうになる叫び声を噛み殺しているからだ。
深夜に絶叫すると流石に家族が怖い。
飛び出しそうな叫びをフィルターにぶつけ、なくなるとすぐに新しいものに火をつける。
チェーンにチェーンを重ねないとすぐに変な声が喉から漏れ出るので仕方がない。
肺にへばりつくタールのことはもう考えないことにしている。
そして煙となって消えていく英世のことも考えないことにしている。

部屋が狭くなる。
雑誌と円盤でどんどんスペースが消えていく。
積み上げられた紙はぶつけた膝を粉砕するくらいの重さになっている。
グラビア写真の多い女性誌の重みは尋常じゃない。
ダンボールに詰めた場合、慣れてない人間が持つと腰がチクワになる程度には重い。
しかしそれを上回る量の女性誌が部屋に積み上げられている。
寝ぼけ眼で歩くと悲劇しか起きないことは明白である。
しかし片付けるスペースがないんだな、これが。

仕事をしたくなくなる。
目を瞑ればそこにケンティーの姿が見える。
キラッキラの笑顔を見せるケンティー。可愛い。
前歯を見せて笑うケンティー。可愛い。
目をつぶって口角を上げたくしゃっとした笑顔のケンティー。可愛い。
目を開くと見たくもないオッサン(店長)の姿が見える。
帰りたい。比較的マジで帰りたい。
今すぐ帰ってケンティーを眺めていたい。
帰らせてくれよ。なあ、頼むから帰らせてくれよ。
時計を見つめる。
あと数時間、中島健人が見られない職場に縛り付けられる。
なんつう拷問や·····。どんな秘密でさえゲロってしまうくらいの拷問だ。
家に帰ればアイドルスマイルの中島健人がすぐに見られるのに、ここではニコニコしながら余計な仕事を振ってくるオッサン(店長)しかいない。
もういっそ殺意すら湧いてくる。
俺の視界を埋めていいのは中島健人だけじゃ。
仕事なんざどうでもいい。
嘘です。振り込むためのお金がいる。
中島健人を見つめて収入を得る仕事しかしたくない。
いや待てよ。中島健人を見つめていられる上に収入を得るとか幸せすぎる仕事なんか天地がひっくり返ってもありえへんやん。
むしろ、中島健人を見つめるためにお金を払う必要があるやん。国宝の拝観料を払う必要があるやん。
ということは、働いて収入を得なければならない。
中島健人を見つめるために、中島健人を見つめる時間を削って金を稼ぐの?
意味わかんない!!あーあ、不労所得ほしいなぁ!!!
という思考のループから抜け出せなくなる。


これが今自分が走っている「地獄へのロード 第一章」である。
第二章ももちろんある。
第二章はこれよりもっとキモイ。
自分で書いててなんやけど、キモイ。
それでも吐き出さないと頭がおかしくなりそうなのでぼちぼち吐き出していきたいと思っている。